絵・文 百頭花
2024年12月 初版発行
フニェルリリンカ、女性名詞。
──「超妖精は、ポーカーのために配られたカードで、おだやかにタロット占いを始めるだろう。」
シュルレアリスム宣言100周年、フニェルリリンカ元年。
フニェルリリンカとは何か? それはこの世のなかのあの世である。 そのほか、何もわからない。わからないが、この世にうっかり出てきてしまった。
小説、批評、絵、ブックデザインのすべてを百頭花がひとりで手がけ、この問いを追いかけた一冊です。
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収録作品紹介
●言いたいことなんか何もない●
「ああ、すっかり忘れていた、私は生れてしまったのだった。」 映画館、運命、居心地悪い身体、麗しの女ドブネズミとの対話。生れてしまってどうしようもない、全ての蒟蒻に向けた短編小説。
●幽霊たちの声:新宿駅東口の記録●
ある日の啓示──「人間はおどろくほど幽霊に似ている」。となれば、国内屈指の心霊スポットである新宿駅で、方々から到来する幽霊たちの声の断片を繋げば「都市によるオートマティスム」が成るのではないか? 2019・20年の記録。
●ヴォイニッチ手稿を読む●
ルドルフ2世やキルヒャーも手にした未解読の奇書・ヴォイニッチ手稿。 言語学の才はないが、愛と魔術ならある! 「生涯のバイブルを一冊だけ選ぶとするなら、ヴォイニッチ手稿を選ぶ」と堂々宣言、百頭花はアナロジー頼りでこの手稿を読むことにした。 なぜか結構真相に迫っている気がする。
●プゥフ嬢●
フニェルの家に迎えられた、麗しい、たいそう麗しい猫のプゥフ嬢。 貴婦人にして猛獣の彼女が、日々の遊びを通じてフニェルに教えはじめたのは、この宇宙の空気と時間をめぐる秘技だった。仕事も行かず猫の秘技を学び続けるフニェルはやがて……。宇宙の謎を明かす短編小説。
●天使業●
「生れる前の人間」に物語を与え、生まれさせてやる天使の業。じつはライターをしていた頃に書いた掌編で、働きたくない気持ちがこれでもかと詰まっている。
●自動的、妖精的──網代幸介の王国●
このフェルナンド・ペソア式の画家が描きだす王国には、自動的(オートマティック)にして妖精的(フェーリック)な風景が広がっている。『てがみがきたな きしししし』(2021年、ミシマ社)をとりあげ、網代幸介の超現実を追う論考。
●いくつかの絵●
最近描いたいくつかの絵(ペン画)を短い文章と共に掲載。
●フニェルリリンカの風景●
フニェルリリンカは、この世の中のあの世。その風景を、ボルヘス『幻獣事典』のイメージで絵と共に紹介する。
●あらゆることのはじまりかけのはじまり、あるいはフニェルリリンカ宣言●
──「超妖精は、ポーカーのために配られたカードでおだやかにタロット占いを始めるだろう」。 ブルトン(1896年生)の『シュルレアリスム宣言』から100年が経った。フニェルリリンカは「この世のなかのあの世」である。"この人生のなかに、あの世のすべてがある"とブルトンに知らせたのは、ほかならぬナジャ──女性であり、貧しく、精神病者として収容された施設のなかで亡くなったナジャ──だった。
超妖精の黄金の瞼は、いま、男たちとは関係なしにひらかれようとしている。 百頭花(1996年生)による女性形の宣言。
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表紙をめくったところにも、ペン画《逆立ちダンス》を掲載。
トレーシングペーパーの遊び紙には、蛾のお姫さまを描いた《Pan en panti 蛾の祝祭》をプリントし、ゴージャスな一冊に仕上げました。
本文ページにも、百頭花によるモノクロのペン画を豊富に収録しています。
絵も文章も詰め込んだ一冊です。
表紙のレースも、もちろん百頭花による手描きです。
「書肆アルマジロ泥棒」にて販売中の「アリスダイカットブックマーク」との相性も抜群。
表紙のレース制作
The making of the lace printed on the cover


表紙のレースは、1から手書きで描きあげました。
すべてを見渡す眼、動物磁気を出す手、自分の身体に生えた植物と踊る恍惚の死者、擬態する蛾など、本書のなかで繰り広げられるフニェルリリンカ──この世の中のあの世──のエッセンスを丁寧に描き込みました。